あなたはボクシングのルールについて、どれくらい知っていますか?リングの上で2人の選手が殴り合うスポーツだということは知っていても、細かいルールについてはあまり知らないという人が多いのではないでしょうか。ボクシングにはプロボクシング、アマチュアボクシングともに3分間のラウンド制や、ボクサーがやってはいけないバッティング、打撃のルールがあります。観戦する時や、これからボクシングを始めてみようと考えている人、カラダを絞るために始めたい人にとっては、ボクシングのルールについて知っておくと今後役立ちます。そこで今回はボクシングの細かいルールや基礎知識について説明していきます。
まずはボクシングを知る上で、最低限抑えておきたい知識について紹介していきます。
ボクシングでは正方形のリングの上で戦いますが、このサイズは一辺の長さが約5.5m~7.3mまでと決められています。この範囲内であれば、どの大きさのリングを使っても問題ありません。
ボクシングの試合に使用するグローブは2種類あり、それぞれ重さが異なります。ボクシングでは体重によって階級が分かれていますが、この階級によって試合中に装着するグローブの重さが決められているのです。男子の場合、63.50kg以下のスーパーライト級までは8オンス(片方227g)、それ以上の階級は10オンスのグローブ(片方283.5g)を装着します。女子の場合、57.15kg以下のフェザー級までは8オンスで、それ以上の階級は10オンスのグローブを装着します。グローブは重いほど安全性が高くなり、重い体重の階級ではそれだけパンチの威力も重くなるため、グローブも重い10オンスが使用されているのです。
試合終了時点までに決着がつかなかった場合は、ジャッジ3名による判定で勝敗が決められます。試合はラウンドごとに10点満点の減点方式で各ジャッジにより両選手にポイントが付けられ、試合終了後に各ラウンドのポイントを集計します。この結果3名のジャッジのうち、2名以上の指示を受けたほうの選手が勝ちとなる仕組みです。
ボクシングの勝敗の決め方は、おもに以下の6種類に分けられます。 ・デシジョン デシジョンとは判定のことで、先ほど説明した方法で勝者が決められます。 ・ドロー 判定の結果ジャッジ2名以上の指示を得なかった場合は、引き分け(ドロー)になります。 ・ノックアウト(KO) 有効打により片方の選手がダウンし、10カウント以内に立ちあがれなかった場合、倒した選手のKO(ノックアウト)勝ちとなります。 ・テクニカルノックアウト(TKO) レフェリーストップやドクターストップなど、KO以外の理由で片方の選手が試合を続けられなくなった場合、試合が止められます。この場合は、試合を続けられる選手のTKO(テクニカルノックアウト)勝ちとなります。 ・ファウル 試合中、片方の選手がルール違反の反則行為をした場合は減点となります。ただし反則行為が複数にわたって行われたり、反則内容が悪質と判断された場合は失格(ファウル)となりその選手の負けが決まります。 ・ノーコンテスト 試合から数日経って、勝ったほうの選手にドーピング使用が発覚した場合など、試合結果がノーコンテスト(無効試合)に変更されることがあります。
2人の選手とともにリングに上がり、試合をさばくのがレフェリーです。試合中反則があったり、片方の選手が危ない状況に陥った時は、レフェリーが試合をストップします。試合を途中で止めたり、終わらせたりする権限があるのはレフェリーだけです。セコンドがタオルを投げたり、ドクターが試合をストップする場合も最終的な判断はレフェリーが行います。
ボクシングには以下3種類のプロライセンスがあり、どのライセンスを所持しているかによってラウンド数が変わります。 ・A級…8回戦(8ラウンド)以上 ・B級…6回戦(6ラウンド) ・C級…4回戦(4ラウンド) 試合で良い成績を残せば、より上のライセンスを取得できる仕組みです。
ボクシングでは選手の体重によって細かく階級が分かれており、同じ体格の選手同士が戦うようになっています。試合の前日には計量が行われ、選手たちはそれまでに自分の階級の規定値まで体重を落とさなければなりません。
ボクシングでは階級ごとに選手のランキングが制定されており、上位にいくほどチャンピオンに挑戦する機会を得られやすくなります。チャンピオンには以下の3つの種類があり、ランキングもそれぞれに制定されています。 ・世界チャンピオン ・東洋太平洋チャンピオン ・日本チャンピオン
ボクシングの試合を観ていて、片方の選手が勝っていたと思っても、その選手が判定で負けになることはよくあるものです。ジャッジのなかには、おかしいと感じるような判定をしてしまう人もいますが、ボクシングの試合には明確な採点基準が存在します。ここではボクシングの判定の種類や、採点方法について説明していきましょう。
ボクシングの判定には以下5種類があり、それによって勝者が決められたり、時には引き分けになったりします。判定によって決着がつく場合 ・ユナニマス・デシジョン(3-0)…ジャッジ3名全員が片方の選手を優勢だと判断 ・スプリット・デシジョン(2-1)…ジャッジ2名が一方の選手を、1名がもう一方の選手を優勢だと判断 ・マジョリティー・デシジョン(2-0)…ジャッジ2名が一方の選手が優勢だと判断、1名がドローだと判断 判定によって決着がつかなかった場合 ・マジョリティー・ドロー(1-0)…ジャッジ1名が一方の選手が優勢だと判断、2名がドローだと判断 ・ユナニマス・ドロー(0-0)…ジャッジ3名がドローだと判断
ボクシングでは選手のどんな部分を見て優劣をつけているのでしょうか?ボクシングの採点時に評価の対象となるのは、おもに以下4点になります。 ・クリーン・エフェクティブ・ヒット 相手にダメージを与えたと判断された有効打で、この数が多ければ多いほど、評価されやすくなります。またパンチで相手のマウスピースを飛ばすなどすれば、たった一発でも高評価に繋がるでしょう。 ・アグレッシブ アグレッシブに相手を攻めれば攻めるほど、採点時に評価されやすくなります。逆にディフェンシブだと、それだけで評価は下がってしまうのです。 ・ディフェンス パンチをブロックしたり、避けたり、どれだけ相手の攻撃をもらわずに試合を進められているかも判断基準の一つです。ただし防御するばかりで攻撃をしない場合は、評価に結び付くことはありません。 ・リング・ジェネラルシップ どれだけ試合の主導権を取れているかという面も採点基準の一つになります。
ボクシングはラウンドごとに10点満点の減点方式でポイントを付けますが、各ラウンドのポイントの付け方は以下のようになっています。 ・10-10 両者互角 両選手に差がないと判断した場合 ・10-9 片方がやや優勢 片方の選手が有利に試合を進めていると判断した場合 ・10-8 片方がダウン 片方の選手がラウンド中に1回ダウンした場合、あるいはダウンに匹敵するダメージを負ったと判断した場合 ・10-7 片方が2回ダウン 片方の選手がラウンド中に2回ダウンした場合
ボクシングを観ていて、「KOとTKOって何が違うの?」「負傷判定って何?」と疑問に思った方もいるかと思います。ここではKOとTKOの違いや、負傷判定について説明していきましょう。
KOとは「ノックアウト」、TKOとは「テクニカルノックアウト」を意味しますが、この違いについてはあまり知られていません。ボクシングでは、この両者の違いがルールブックにより明確に定義されています。 ・KO ボクシングでは、片方の選手が以下5つのいずれかに陥った場合、KO負けとなります。 1. ダウンしてから10カウント以内に立ちあがれない場合 2. ラウンドが始まって10秒経っても、選手が試合を始めない場合 3. 1ラウンド中に3度ダウンした場合(4回戦の場合は2度ダウンした場合) 4. 相手の有効打によってリング下に落ち、20秒以内にリングに戻れない場合 5. ダウンカウント中に、選手のセコンドがタオルを投入した場合 ・TKO 一方、片方の選手が以下6つのうちのいずれかに陥った場合はTKO負けとなります。 1. 相手の有効打によって負傷し、これ以上試合を続けられないとレフェリーが判断した場合 2. 試合中、両選手の実力差が明らかでレフェリーが危険だと判断して試合を止めた場合 3. ラウンド中にセコンドがタオルを投入するか、ラウンド間に棄権を申し出て、レフェリーがこれを認めた場合 4. 相手の有効打により負傷し、ドクターがチェックして試合続行は不可能だと判断した場合 5. 試合中反則を犯した選手が負傷し、試合が続けられなくなった場合 6. ダウン時のカウント途中に、レフェリーが試合をストップした場合
KOとTKOの違いに続いて、ダブルノックダウンとダブルノックアウトの違いについても説明していきましょう。ダブルノックダウンとは、お互いの攻撃により両者が同時にダウンした状態のことです。一方ダブルノックアウトは、お互いの攻撃で両者がKOされた状態で、以下のような場合はダブルノックアウトとなります。 ・ダブルノックダウン後、両者ともに10カウント以内に立ちあがれなかった場合 ・ダブルノックダウン時、両者ともにラウンド中3度目のダウンだった場合 ・ダブルノックダウン時、両者ともに意識を失っているなど、試合の続行が難しいとレフェリーが判断し、試合を止めた場合
負傷判定とは、試合中に片方または両方の選手が負傷し、試合の続行ができなくなった場合にとられる処置です。ただし負傷判定に行くかどうかは、負傷の原因が有効打か偶発的なものかによって異なります。さらに偶然の場合であっても、ラウンド数によって負傷判定が行われるかどうかは変わってくるのです。 ・有効打による負傷の場合 有効打により片方の選手が負傷して試合を続行できなくなった場合、その選手のTKO負けとなります。 ・偶然による負傷の場合 試合前半のラウンドで片方の選手が偶然のアクシデントにより試合続行不可能になった場合、負傷判定に行かず引き分けとなります。試合後半のラウンドの場合は、負傷したラウンドを含むそれまでのラウンドのポイントを集計し、負傷判定により勝敗を決める決まりです。試合の前半・後半とは、その試合の全ラウンド数の半分を意味し、4回戦なら2ラウンドまで、6回戦なら3ラウンドまでが前半となります。ただし10回戦以上の場合は、4ラウンドまでに負傷が起こった場合に限り、引き分けとなります。
ボクシングのルールについて大体分かったところで、今度はボクシングの豆知識を紹介していきます。ボクシングの未経験者であっても、これを知っていたらかっこいいというものばかりなので、ぜひチェックしましょう。
ボクシングでは「JBC(日本ボクシングコミッション)」認定のプロライセンスがあります。プロになるためにはプロテストを受験し、合格すればライセンスが発行されます。逆に言えば、ライセンスを持っていないとプロの試合には出られません。
ボクシングのライセンスを取得するには、視力や年齢などの制限があります。これらの条件を満たさないとライセンスはとれませんし、ライセンス所持者であっても年齢制限を越えればライセンスは返上しなければなりません。まず視力に関しては、0.5以下はNGという規定がありましたが、現在はこの数値規定がなくなり、制限自体も撤廃の方向に向かっています。年齢制限は17歳から36歳までで、37歳になった時点でライセンスは自動的に失効となります。現役のチャンピオンが37歳以上だった場合は、即失効とはなりませんが、王座から陥落するとライセンス失効となる仕組みです。
ボクシングの各階級で規定された体重は、「キロ」ではなく「ポンド」により決められています。なぜなら近代ボクシングが発祥したのがイギリスで、イギリスでは重さに「キロ」ではなく「ポンド」を使うのが一般的だからです。そのためボクシングでもキロではなく、ポンド表記になっているのです。
ボクシングの階級は男子、女子ともに全部で17階級あります。ここでは、それぞれの階級が何kgまでなのかについて見ていきましょう。
男子の階級は以下のように規定されており、最重量の階級は「ヘビー級」、最軽量の階級は「ミニマム級」となっています。 階級 体重 ・ヘビー級 90.72kg~ ・スーパーフェザー級 ~58.97kg ・クルーザー級 ~90.72kg ・フェザー級 ~57.15kg ・ライトヘビー級 ~79.38kg ・スーパーバンタム級 ~55.34kg ・スーパーミドル級 ~76.20kg ・バンタム級 ~53.52kg ・ミドル級 ~72.57kg ・スーパーフライ級 ~52.16kg ・スーパーウェルター級 ~69.85kg ・フライ級 ~50.80kg ・ウェルター級 ~66.68kg ・ライトフライ級 ~48.97kg ・スーパーライト級 ~63.50kg ・ミニマム級 ~47.62kg ・ライト級 ~61.23kg
女子の階級数も男子と同じですが、女子の場合は79.38kg以上がヘビー級となり、最軽量の階級は男子よりも下の「アトム級」となっています。 階級 体重 ・ヘビー級 79.38kg~ ・スーパーフェザー級 ~58.97kg ・ライトヘビー級 ~79.38kg ・フェザー級 ~57.15kg ・スーパーミドル級 ~76.20kg ・スーパーバンタム級 ~55.34kg ・ミドル級 ~72.57kg ・バンタム級 ~53.52kg ・スーパーウェルター級 ~69.85kg ・スーパーフライ級 ~52.16kg ・ウェルター級 ~66.68kg ・フライ級 ~50.80kg ・スーパーライト級 ~63.50kg ・ライトフライ級 ~48.97kg ・ライト級 ~61.23kg ・ミニフライ級 ~47.62kg ・アトム級 ~46.26kg
ボクシングの細かいルールや採点基準について説明してきましたが、これを今すぐ全部覚える必要はありません。これからボクシングを始めるという人は、実際にボクシングをやりながらゆっくり覚えるのが良いでしょう。まずはお気に入りのボクシングアイテムを購入して、ぜひボクシングを始めてみましょう。